「聲の形」 登場人物 好き嫌いとか

聲の形の劇場版を2度観に行ったのでこの作品について語らせてもらいたいと思う

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映画『聲の形』 本予告

 

 

  • まずは漫画版について

 

僕は漫画版をTSUTAYAのレンタルブックで一気読みして

そのあとKindle版とibooksで全巻揃えたのですが、

漫画的記号で表現された登場人物でよくここまで読者に

「現実でもいそう、ありそう、こういう事あった」と感じさせる表現が出来るなぁと感心させられました。

普段からものすごく緻密に人間観察をしてそれを自分の絵で表現する訓練をしてないと出来ない業だと思います。

原作者の方は大今良時という男性作家のようなペンネームを使われているのですが、確認してみるとやはりというか女性の作家さんです。

やはりと思ったのはジョジョの作者の荒木飛呂彦氏が書いたこんな一文が頭にあり、これは生物的にも的を得ている意見だと僕は思っているからです。

 

49巻
最近は女性の歌手じゃないと聴く気がしないってのがあるけど、作家とかマンガ家とかでも、具体的に作品名は、あげないけれど、特に恐怖の分野に関して「こいつスゲー怖ェこと考える人だなぁー」と思って作品名を見るとたいてー女性。
個人的な意見なんですけど、女性にははっきり言ってズバ抜けた感じの建築士とか画家みたいな人は、いないと思うけれど、「情緒関係」についてみれば、かなわないって人が、たくさんいて、とても勉強になる。
最近は、その辺に注目して色んなものを見ている。

 

緻密に人間関係の情緒を観察し描きだせるのは女性的特徴の強みだと素直に思うのですが

こういう事を言うと怒られるんでしょうか?

この作品に出てくるキャラクターはみんな外見こそ漫画的な表現で描かれています。しかし個々のキャラクターが持つ特性は非常に現実的で生々しく感じられます。主人公もヒロインも含め、愚かさも賢さも人間の情感がそのまま漫画表現として語られており

彼らは善とも悪とも捉えられない、あくまで生の人間としてフラットに描かれていました。男性の作家ではまずこれほど生々しい人間関係を描ききるというのは不可能と言えるでしょう。

 

この作品はひたすらキャラクターの人間性を掘り下げ語る事で楽しめると思うので

ここではその人間関係を紡ぐキャラクター達を紹介していきましょう

 

・西宮硝子

 

漫画版

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映画版

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劇中のヒロイン

動作がいちいちかわいいのですが

それが(漫画版では)あざとく感じません

聾者という特徴上作中での台詞は極端に少なく

一番大事な台詞も発音の問題で想い人に聞き届けてもらえない不憫な子

読者も視聴者も日本手話を解せる人はそれ程多くないと思われるので

人となりは彼女の表情や動作に注目して読み解く事になります

 

漫画版での作者の表情への表現の拘りはこのキャラクターに集約されていると思う

漫画の表情は常々記号的に出来ていると思うのですがこのキャラに関しては

コンテキストの質も含め漫画史に残る記号を毎回発明している様な

凄まじい表現の塊だったと言えるでしょう

ただ笑っている顔、困っている顔、あらゆる表情が言葉以上の表現で持って

語りかけてくる希有なキャラクター

 

何しにきやがったこいつ宮

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怒宮

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死ぬ事を決めて最期に観る花火

石田からは笑顔にしか見えない

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びっくり泣宮

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進路を石田に聞かれて照れて困宮

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終盤素直な笑顔を見せる宮

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当たり前ですが石田の視点からは

結弦と家族と同じく作中を通して顔に×がつかなかった人物で

彼は最初から最後まで少なくとも西宮の事を理解しようと努めていた事が伺えます。

 

石田将也

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主人公なのですが彼については正直あまり語りたくないのです。生々しく迫ってくるものが強すぎて

 

作者もキャラ達が自分の要素を持っている事で気持ち悪くなる感覚があると

言っていたのですが、この作品観た人はみんな自身の分身に近い人物を見出すと思うのですよね。そういうのは度を過ぎるとゴッホのようなおどろおどろしい自画像を描かれ目の当たりにさせられてるような心持ちがしてきて気持ち悪くなりませんかね?

 

劇エヴァでいうシンジ君のポジションを課せられている人物だと思うのですが

はっきり精神崩壊してくれるシンジ君より正気を保っている分

心情に人間性と社会性が残っており、生々しく気持ち悪いと言えるでしょう

贖罪を求めてさまよう少年

 

 

 

 

・植野直花

 

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やってる事はかなり極悪非道ですが

読者が本心で思ってる事を言ったりやったりしてくれるので川井より評判がいい女の子です。

僕が映画観た後の後ろのカップルの会話はこんな感じ

女「川井が一番嫌い」

男「まぁ、ああいうのおったけどな」

女「(植野)なおちゃんはいいよね」

植野がなおちゃん呼びされる一方で川井さんは呼び捨てである。

 

読者の本音の部分を語る役割を課されたキャラクターで

石田も結弦も西宮を言い訳にしてるとこがあるので

その意味では植野は劇中で唯一西宮と良きにしろ悪きにしろ対等な人間として

自身の本音を持って接し続けた人物だと思います。

恋敵として西宮を敵視しますが終盤になって恐らく恋敵としてはそのままに

和解したのではないかと思われる描写もあります。

西宮に対して向けられる嫌悪感は植野と向き合うつもりがないという

西宮のコミュニケーション上の態度の欠点を理解した上でのものだったので

西宮側からアクションを起こす事で関係は改善されたのではないでしょうか

最終回の時点で同姓としては佐原より西宮をよく理解している人間になっていたように思います。それを素直に表現はしなかったかも知れませんが。

結局嫌いというのも執着の1つの形ですし、固定化した関わりの形態なんです。

彼女は映画と違って漫画では手話は多分最後まで何も覚えてないみたいですね。漫画では外面上は西宮が嫌いという関わりを保っていました。

 

想い人の石田に対しては西宮への劣勢が確定してから意識のない間に唇を奪う

玉砕覚悟でベッドに潜り込むなど力技に持ち込みますが

意識のない時の事は当然気付かれずじまいで

布団で待ち伏せを図った際にはピーナッツを投げられ撃退されてしまいました。

「生きるのを手伝って欲しい」というプロポーズ同然のお願いをされた西宮と比べると

再会時から石田の為に泣いたりその様を見られているのに

最後まで本心すら気付いてもらえない不憫な子

ひたすら本心をぶつけていく直情型にも関わらず西宮以上に

ディスコミュニケーションの塊だと思います。

読者の人気は高く、第2のヒロイン格

 

 特に理由しかない暴力が西宮を襲う

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布団に潜り込み獲物を待つ

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 ・川井みき

 

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本作品を観た観客や読者から間違いなく一番嫌われている人物(次点で小学校教諭か)

作者によると彼女は裏表は特になく

彼女の正義感の元、正しいと思った行動に努めているだけだというのだが

正論は時に人を追いつめるという事の象徴か

薄暗い過去を持つ主人公たる石田を追いつめる方向に正義感は発揮されます。

 

それなりの自意識もあるようで高校時代まで我が身が可愛いのも間違いないですが

しかし注意深く読んでると確かに彼女は子供時代から積極的に西宮いじめに加担は

しておらず、態度としてはともかく言動としては石田を諌めていたのも彼女の劇中の言葉通りなのですね。

 こうした特性はやはり多くの読者の

現実の人間関係におけるポジションの取り方に一番近いのでしょう

故に彼女を観た読者はみんな

気色悪い自分の臓物を目の前に置かれるような

同族嫌悪の情が働き、彼女が嫌いになる。

彼女は善人でありたいという社会性を持つ人間が保有する正義感という

感覚がもたらす醜悪さの権化です。

ポリティカルコレクトネスが振りまく悪臭を具現化し

ひいては人間自身の社会が持つ欠点と歪を浮かび上がらせそれを観客に内省させてくれる、かわいこちゃん

そんな訳で僕は割と好きなキャラなのですが劇中では千羽鶴を集められなかったり

あまり周囲の人間からは信用されておらず、劇外でも評判は散々である。

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色々な人物がいるんだけど僕にとっては

この4人が面白かった

 

結弦は中学生であんな男の子っぽい女の子は流石に無理じゃないかと

思うので漫画的な人物だと思うのですがどうでしょう?

結弦みたいな子がいたなぁって思う人いるでしょうか?

西宮母、石田母もいいキャラしてるのですが人物として色々考えてみて

面白いのは西宮母の方ですかね

 

この作品はどの人物をどういう風に語り、どう好き嫌いが分かれるかで

読者の10代の状況が透けて見えてしまうという恐ろしい群像劇になってるんですが

皆さんどうでしょうか?誰が好きで誰が嫌いでしょうか?

 

 

 

 作者にいいたい事

 

ファンブックで作者が「将也の側に恋愛感情は絡んでいません」

て言ってようと

 

どう考えてもこの一連のシーンは

プロポーズ以上の意味合いがあると思います

 

石田「君に生きるのを手伝ってほしい」

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西宮「わかった」

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序盤で必要とされるのが嬉しいって言って鯉に餌をやってる西宮を鑑みれば

 

この台詞は

「生きている間はずっとあなたの存在意義でいさせて下さい」

って言ってる事に他ならない訳で

恋愛感情が絡んでないと言われても説得力がないっす

 

ファンブックを読んでると

「ここまで緻密に人間を描いてるんだから読めばあなたの心が映し出されるでしょう?

それを聞かせて下さいよ」

という原作者の心の声が聞こえてくるかのようでした。

 私は作者がファンブックでどこまで本当の事を言ってるのか怪しく思うのです。

 「回答は全て作品の中にある」 というのもジョジョ荒木飛呂彦氏の言葉ですが

聲の形の作者の大今良時もそういう作家なんじゃないでしょうか?

短期間で漫画の絵が向上した画力もさる事ながら

この人は人間関係を漫画という媒体で表現する事と

キャラクターの情緒を無数の観点からイメージし物語として構成するという事に関して天才的な作家だと思います。